7.ひとさし指のメロディ一
ひとさし指のメロディ一中孝介
笑顏はみんなのものなの
だからすぐに消えてくのね
分け合うつもりもないのに
いつも
かなしみは誰もいらない
だから胸の中に今も
消えないで殘っているの
ずっと
ひとりピアノに冷た
く座り君がつぶやく
指一つでたどる
なつかしい歌
かなしい音だね
つまずきながらも
進んでいくメロディ
まるで君みたいだよと言い
かけて僕は何も言えず
さよならは誰もくれない
だからさみしい夜はいまも
目を閉じれば會いにくるの
いつも
ひとりピアノに問い
かけるように君がつぶやく
指ひとつでたどる思い出の歌
つまずきながらも
進んでいくメロディ
こんな歌もあったねと
目を閉じた君の指が止まる
細い指ひとつで紡いでいくメロディ
音になりそびれた音ひとしずく
頰をこぼれ落ちて
つまずきながらも進んでいくメロディ
まるで君みたいだよと微笑んだ僕を君が笑う
さみしい音だね
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